2023年2月13日(日)に、本領域研究の共同フィールドの一つである沖縄県石垣市において、ワークショップ「石垣島をめぐる水共生学」を開催しました。石垣島を含め島嶼部は、概して水が希少資源であり、雨が降らない時期が続くと思えば、台風などで集中的な降雨があることも珍しくありません。極端な水環境で水を活用するために様々な技術的な方法が適用され、同時に、社会的・文化的な工夫がなされてきました。生き物の観点では、独自の進化を遂げた生物種が多く、希少種となっているものも多くいます。本領域研究で奄美・琉球列島を共同フィールドの一つとした理由は、こうした特殊な環境における水の循環と社会・文化、生き物との関係に焦点をあて、水共生学を深めていこうと考えたためです。
本ワークショップは、琉球列島で研究をしている研究者と現地で水をめぐる様々な実践活動を行っている地元の方々との情報共有と意見交換を行うことを目的としました。
第一部で領域全体の概要と各計画研究班の紹介・進捗状況の報告を行った後、第二部で水共生学プロジェクトに参加する研究者から研究紹介を行いました。
第三部は地元側からの話題提供で、環境省が推進する環境行政の話題や石垣島の歴史と考古遺跡の紹介、沈砂池を利用したビオトープづくりや水牛を使った有機農耕水田、サトウキビ畑の赤土流出防止策など、とても魅力的で興味深い内容でした。
総合討論では、研究者と現地の実務者や水に関わる活動を実施している方々との意見交換を行いました。地元の方々が主体的に多岐にわたる活動を実践されていることに圧倒されました。他方、そうした活動に行き詰まりを感じる部分もあるため、水共生学が科学の立場から発信することで世論や行政に働きかけてほしいという趣旨の発言があり、水共生学への期待を感じました。
ワークショップの最後には、本領域のアドバイザーである沖 大幹氏(東京大学)と園部 哲史氏(アジア開発銀行研究所)から、領域の活動や発表内容に対するコメントをいただきました。とりわけ、第一部の領域の活動に対し、もっと国際的な動向に目を向け、わくわく感を感じられるような研究を展開してほしいと叱咤激励のお言葉を賜りました。本ワークショップ全体を通じて、プロジェクトメンバーと地元の様々なステークホルダーとの交流を行い、研究者側が何を提供できるか、地元が何を望んでいるかのマッチングを考える貴重な機会となりました。
石垣島をめぐる水共生学
日 時:2023年2月13日(月)13:00~17:30
開催方法:対面参加
会 場:大濱信泉記念館
(沖縄県石垣市登野城2-70)
プログラム
12:30
13:00-13:10
13:10-14:00
開場
開会挨拶
第一部 ブリーフィング
「水共生学」概要説明
荒谷邦雄(九州大学)
計画研究A01 概要と活動報告
渡部哲史(京都大学)
計画研究B02 概要と活動報告
藤岡悠一郎(九州大学)
計画研究B03 概要と活動報告
松本朋哉(小樽商科大学)
計画研究C01 概要と活動報告
荒谷邦雄(九州大学)
14:00-14:10
14:10-15:20
休憩
第二部 水共生学からの話題提供
「石垣島の農業利水」
乃田啓吾(岐阜大学)
「サンゴ礁/海底地形」
菅 浩伸(九州大学)
「琉球列島の水生昆虫の危機的状況とその保全」
苅部治紀(神奈川県立生命の星・地球博物館)
「石垣島の集落コミュニティ」
渡部哲史(京都大学)
「やんばる林道パトロールの結果から見えてきたこと」
村岡吾朗(九州大学)
15:20-15:25
15:25-16:15
休憩
第三部 地元側からの話題提供
「石垣島の環境行政」
山本以智人(環境省石垣自然保護官事務所)
「沈砂池ビオトープ」
冨坂峰人(日本工営株式会社沖縄支店)
「石垣島の歴史と考古遺跡」
宮城公平(石垣市立八重山博物館)
「水牛を使った有機農耕水田」
笹村 出(のぼたん農園)
「サトウキビ畑の赤土流出防止策」
干川 明(NPO法人石西礁湖サンゴ礁基金)
16:15-16:25
16:25-17:20
17:20-17:30
休憩
第四部 総合討論
閉会挨拶