本領域研究の共同フィールドの一つである沖縄県石垣島において、合同巡検を実施しました。時期によって極端な降水量差が起こる島の水環境は、流域面積の大きな河川が存在する日本列島の四大島や大陸と比べると特異な点がみられます。特殊な環境における水の循環と社会・文化、生き物との関係に焦点をあてた合同巡検となりました。
巡検内容
・野底マーペー(野底岳)
・フルスト原遺跡(大濱)
・沈砂池ビオトープ(大里)
・イシガキニイニイ保護区域
・赤土流出対策圃場試験(名蔵)
・のぼたん農園(崎枝)
・オキナワウラジロガシ巨木林(屋良部岳)
まず、2023年2月12日(日)、石垣島北東部の野底岳でプレ巡検を実施し、森の様子や島の土地利用を観察しました。ワークショップ翌日にあたる2月14日(火)には、参加者のほぼ全員で本巡検を行いました。巡検先は、ワークショップで発表をいただいた場所で、700年以上前に築造された石垣の遺構が残るフルスト遺跡(大濱)、沈砂池をビオトープとして活用する取り組み(大里)、絶滅の恐れが高いイシガキニイニイ(セミの一種)の保護区域、赤土流出対策のサトウキビ圃場試験(名蔵)、水牛による水田耕作を実施しているのぼたん農園(崎枝)、オキナワウラジロガシ巨木林(屋良部岳)と島の中を駆け巡りました。
名蔵のサトウキビ畑では、耕起の方法が赤土流出量をどのように変えるのか、現場で定量的に計測を行っていました。のぼたん農園では、効果的な有機農法を模索する多様な取り組みを実施し、実際に多様な水生昆虫が生息していることを確認しました。地元の方々が現場を詳しく観察し、科学的な知見も取り入れて試行錯誤を繰り返している姿が印象的でした。
生物圏の研究者が多かったこともあり、巡検は全体的に生き物や環境との調和を目指した取り組みを多く拝見しました。農業の進行と赤土の流出抑制、農薬の使用と水生昆虫の保全など、両立の難しい現実的な課題について考えさせられ、島の将来を見据え、現実的な課題解決に向けた学問が必要であることを強く実感した巡検となりました。