計画研究班 概要

  水共生学の柱となるのは、水循環システムを地球圏―生物圏―人間圏の相互作用の場としてとらえ、以下の三点を実施することである。

  1. 水循環システム内に生じる結節点の常態的な「ゆらぎ」およびその歴史的な変遷を、地球圏、生物圏、人間圏それぞれから得られるデータをもとに、各地域の実態に即して動態的に解明すること
  2. 得られた研究成果から当該地域の将来像とそこに至る道筋を提示すること
  3. 現地のステークホルダーとともに持続可能な水循環システムの実現に向けた学術と現場との往還関係を構築すること

上記三点を達成するため、本領域は以下の研究班で構成する。

①総括班
②4本の計画研究班:A 地球圏(A01)、B 人間圏(B02,B03)、C 生物圏(C01)
③学術横断チーム
④公募研究班

 ②計画研究班に地球圏(A)、人間圏(B)、生物圏(C)を対象とする三つの研究項目のもとに、四つの研究計画班を設置するが、地球圏を対象とする研究項目(A)と生物圏を対象とする研究項目(C)にはそれぞれ一つの計画研究班を設置するのに対して、人間圏を対象とする研究項目(B)には二つの班を設置する。これは、現在の水循環システムの在り方に人間圏の活動が大きな影響を及ぼしており、この人間圏での活動を多角的に分析する必要があるためである。

 計画研究が相互に有機的な連携を保ちながら領域推進をする工夫として、本領域では研究期間を前半(初年度~3年度まで)と後半(4年度~最終年度)の二つのフェーズに分けて進行し、各フェーズで各計画研究班の役割や班間の連携手法を組み変える。前半では、各計画研究班において水循環システムの過去から現在までの「ゆらぎ」を動態的にとらえ、システム内の均衡がどのように推移してきたのかを明らかにする。この過程において各圏域で得られるデータセットを相互に活用する。例えば、遺跡で出土した木材の年輪、過去の新聞記事や伝承情報などを計画研究A01に提供し、シミュレーションの精度向上を試み、同時にシミュレーションデータを人文社会科学や生態学において活用することが考えられる。さらに、人文社会科学や生態学によるマイクロスケールの知見から、他の計画研究班で焦点化すべきパラメータや必要となるデータセットの提案を行い、班間で連携して共同研究を推進する。各計画研究は代表者が統括するとともに、設定したテーマに関連する三本のサブテーマを設定して構造化し、それぞれサブテーマリーダーを置く。

 計画研究班の相互連携がいっそう必要となる後半フェーズでは、計画研究の枠を超えた学術横断チーム(領域代表,計画研究代表,サブテーマリーダーを中心に構成)を組織する。学術横断チームが中心となって、主に共同フィールドを対象に各計画研究班で得られた研究成果をもとにして、持続可能な水循環システムの実現に向けたシナリオの策定と社会実装までを含む、水共生学の創生に取り組む。

本領域の計画研究班
本領域の実施計画

 

 本領域では、複数の計画研究班が共同して調査・研究・社会実装までをおこなう共同フィールドを複数設定する。
主な共同フィールドは、以下のとおりである。

  1. 北部九州(特に、佐賀県武雄市)
  2. 釧路市・道東地域
  3. 小樽
  4. 琉球列島
  5. メコン川流域 など

共同フィールドとして設定した理由は以下である。

  1. 九州最大の河川、筑後川流域を含んでいるため。河川交通や河口部の開発、干潟の利用、さらに豪雨災害の頻発など、様々な観点から水循環システムの研究に適している。
  2. 日本最大のラムサール条約湿地であり、地球温暖化の影響などにより草原化が進みつつある釧路湿原が位置しているため。また、道東最大の港を有するため。
  3. 北海道の港湾都市として発達したため。
  4. 台風の頻度や強度の変化による影響を強く受けるため。また、離島であるがゆえに、水資源の確保と水域の生物多様性の保全がトレードオフの関係となっているため。
  5. 東南アジア最大の淡水湖トンレサップ湖を抱える地域有数の国際河川。周辺諸国の開発の進展により、漁業や生活・工業用水、水力発電などの利用がすすみ、結果として流域生態系の破壊の危機に直面しているため。

 また、これらの共同フィールドでの成果と経験を、ほかの地域でも適用可能なものとするために、モデル化を目指す。

主な共同フィールド